あなたの心を❤️で満たして
「黒沢様がいらしたら、お式の前にこれにご署名をして頂きますので」


白い用紙と茶色の枠線を見つめ、その左肩に印字された三文字を見て、ゴクン…と息を飲み込んだ。

『婚姻届』と記された用紙には、既に保証人の氏名も記載されてある。


「あの……このお二人は?」


記された文字を指差すと、一人は夫となる人の叔父さんで、もう一人は私の伯父だと言われた。


「……伯父さん?」


会ったこともない人だから驚く。
母のこともよく覚えていないけれど、兄弟がいたんだ。


「留衣様の結婚をお話すると喜んでおられましたよ。幸せを祈っています、と仰ってました」


真面目に話す三上さんの顔を窺いながら、ふぅん…と胸の中で頷く。
娘が結婚するというのに、両親はまるで知らん顔なのに。


(それはずっと昔からそうだったけど)


今更ながら、あの人達には何の期待もしていないし、私にはきちんと他に親が居てくれたからいいのだ。


育ててくれた亡き祖父母を思い出し、胸が張り裂けそうなくらい痛くなる。
婚姻届を見たまま涙が零れ落ちそうになり、慌てていけない!と気を引き締めた。


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