あなたの心を❤️で満たして
(でも、ここで後ろに座ると言ったらヒンシュクものだよね)


「ありがとうございます」


お礼を言ってシートの上にお尻を付けた。 
両足を揃えて中に入れると何も言わずにドアを閉められ、パン!と勢いのある音にビクッとして、思わず顔を引きつらせた。


(黙って閉めるのは止そうよ…)


つい訴えたくなる。
でも、彼はそんな私の反応なんてお構いなしで、運転席のドアを開けると乗り込んでくる。


やっぱり外見通り、中も彼のサイズには合ってない。
運転もしづらそうだな…と思い、狭くないのかな…と心配した。



「行きたい場所とかある?」


乗り込んだ彼がシートベルトを締めながら聞き、私も同じ様にシートベルトを引っ張りながら、んー…と迷う。


一番行きたい場所は以前住んでいた家。
今頃は桜の花も散り、若葉が顔を覗かし始めた頃だ。


「……いいです、何処でも」


家に行きたいと思うのはタブーだろう。
私はもう「黒沢留衣」になったのだから。


「何処でもいいの?じゃあホテルでも?」


「え?ホテル?」


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