あなたの心を❤️で満たして
何も知らなかった彼のことが少し分かり、私は何となく彼に親近感を覚えた。
いつも置き去りにされてた理由も理解できて、改めて彼が有能な研究者なんだ…と知った。




「此処だよ」


キャンパスの一角に建つ校舎に入ると彼は二階へと進んだ。その一番端にあるドアをノックして開けると、中からは消毒っぽいニオイが漂ってきて……。



「おお、済まんな。黒沢君」


低音な声が聞こえ、中に入った彼が、いえ…と答えている。


「学生じゃ頼り無くてな。休日なのに申し訳なかった」


腰の低そうな物言いに、どんな人なのだろうかと気になった。開け放たれたドアの後ろに佇み、ちらっと中を覗いて見ると……


狭そうな室内には白衣を着た人が五、六人いて、その中にはグレーヘアをした人もいる。他にも女子が二人いて、手にした試験管の中に液体をポトポト落としていた。



「…ん?誰かな?」


グレーヘアの男性が振り向き、ドキン!と胸が弾む。
明らかにこの人が教授だと分かり、ペコンと頭を項垂れた。



「…ああ、教授。妻です」


黒沢さんがそう言うと、室内にいた人達が一斉に振り向きーー

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