プロポーズ(第6話)
ふたりは繁華街の、とある角を曲がって、いかがわしいホテルの建ちならぶ区域へと入っていく。
そして、一軒のラブホテルの中へと姿を消した。
いやがる美穂を、男が無理やり連れこんだ、というのでなかった。
むしろ、美穂のほうが積極的に男を誘って入っていった。そんなふうに見えた。
「ああ、美穂……」
自然に涙があふれてきた。
このごろデートに誘っても、断られてばかりだった。
薄々はわかっていたことだが、今みたいに現実をつきつけられては、認めるしかなかった。
美穂の心はもうぼくのところにはないのだ。
以前は、あんなにぼくのことを好きだって言ってくれたのに。
あんな男……ぼくよりちょっとだけ背が高くて、ぼくよりちょっとだけカッコよくて、服装からして、ぼくよりちょっとだけ収入のありそうな、あんな男がそんなにいいのかい?
ぼくは泣いた。
ヤケになった。
ヤケクソで決意した。
くそっ、美穂がそのつもりなら、ぼくだって結婚してやるっ。