月下花火
「荒木 林蔵殿とお見受けする」

「いかにも」

 俺の言葉に驚くでもなく、堂々と頷く。
 さすが、免状持ちは違う。

 荒木は俺を真っ直ぐに見、五間ほどの間を取って足を止めた。

「辻斬りか」

「さて、どうだか」

 短いやり取りの後で、俺は刀を抜いた。
 大乱れの刃紋が月の光を撥ねる。

「ん」

 荒木が眉を顰めた。
 誰しもこの構えを見ると妙な顔をする。

 抜いた刀を肩に担ぐように後ろに回し、居合のように腰を落とす。
 このような構え、見たこともないだろう。

「それが構えか」

 若干馬鹿にしたように言いつつも、荒木は足を踏みしめた。
 右手を刀の柄にかける。

 正規に免状を取得した者なら、このような構えとも言えない構え、恐れるに足りないだろう。
 端から油断し、一気に踏み込んでくるはずだ。
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