月下花火
だがそれなりの場数を踏んだ者なら、手の見えない相手に不用意に踏み込むことはしない。
現に荒木は俺の手を読もうと、腰を落として慎重に間合いを測る。
さぁっと雲が流れ、月明かりを隠した。
その刹那。
荒木が動いた。
鞘走る音と共に、銀の閃光が腰から放たれる。
荒木の刀が眼前に迫る直前、俺は思い切り地に沈んだ。
その勢いのまま、肩に担いだ刀を大きく回して袈裟に斬り下げる。
月が再び顔を覗かせ、荒木の刀は俺の頭上を掠めた。
次の瞬間、無数の星が光り、一気に降ってくる。
宙にあったときは月明かりで煌めいていた星々は、地に落ちると共に、びちゃびちゃと耳障りな音を発して掻き消えた。
最後に、どしゃ、と二つになった荒木の身体が、星々が作った黒い水たまりに頽れる。
荒木の身体から迸り出た黒い水が辺りに広がり、俺の足元に月を映した。
まるで空に浮いているようだな。
頭上にも足元にも月がある。
なかなか風情があるの、と空を見上げ、俺は血振りをくれた刀を納刀すると、静かに踵を返した。
現に荒木は俺の手を読もうと、腰を落として慎重に間合いを測る。
さぁっと雲が流れ、月明かりを隠した。
その刹那。
荒木が動いた。
鞘走る音と共に、銀の閃光が腰から放たれる。
荒木の刀が眼前に迫る直前、俺は思い切り地に沈んだ。
その勢いのまま、肩に担いだ刀を大きく回して袈裟に斬り下げる。
月が再び顔を覗かせ、荒木の刀は俺の頭上を掠めた。
次の瞬間、無数の星が光り、一気に降ってくる。
宙にあったときは月明かりで煌めいていた星々は、地に落ちると共に、びちゃびちゃと耳障りな音を発して掻き消えた。
最後に、どしゃ、と二つになった荒木の身体が、星々が作った黒い水たまりに頽れる。
荒木の身体から迸り出た黒い水が辺りに広がり、俺の足元に月を映した。
まるで空に浮いているようだな。
頭上にも足元にも月がある。
なかなか風情があるの、と空を見上げ、俺は血振りをくれた刀を納刀すると、静かに踵を返した。