月下花火
弐
ちゃぽん、と魚が跳ねた。
月に誘われて家を出てみたのだ。
狭い長屋は風通しも悪く蒸し暑い。
外のほうが、もう涼しい、と月を見ながらぶらぶら歩いて川べりに出た。
川は時折きらきらと輝きながら、ゆっくりと流れている。
風の音しか聞こえない、静かな夜だ。
私は土手の上にしゃがみ込み、川に映る月を見つめた。
虫の声も聞こえない、怖いほどの静寂に、自分の存在もあやふやになる。
そのとき、不意に空気が切り裂かれた。
何か音がしたわけでもない。
だが静寂が破られた気がした。
大きく空気が動いた、というのだろうか。
顔を上げた私は、川向うに無数の星が瞬くのを見た。
月の光を受けて赤くきらきらと光り、一瞬後には掻き消える、不思議な星々。
何と美しい光景なのか。
何かが倒れるような音と共に、辺りは再び静寂に包まれた。
月に誘われて家を出てみたのだ。
狭い長屋は風通しも悪く蒸し暑い。
外のほうが、もう涼しい、と月を見ながらぶらぶら歩いて川べりに出た。
川は時折きらきらと輝きながら、ゆっくりと流れている。
風の音しか聞こえない、静かな夜だ。
私は土手の上にしゃがみ込み、川に映る月を見つめた。
虫の声も聞こえない、怖いほどの静寂に、自分の存在もあやふやになる。
そのとき、不意に空気が切り裂かれた。
何か音がしたわけでもない。
だが静寂が破られた気がした。
大きく空気が動いた、というのだろうか。
顔を上げた私は、川向うに無数の星が瞬くのを見た。
月の光を受けて赤くきらきらと光り、一瞬後には掻き消える、不思議な星々。
何と美しい光景なのか。
何かが倒れるような音と共に、辺りは再び静寂に包まれた。