第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
12.帰路
□
車内はしばらく無言だった。
イルヴィスは静かに外を眺めていて、話しかけるタイミングがつかめなかったのと、一日遊び回った疲れとで自然とそうなってしまうのだった。
馬車の中でガタガタと揺られながら見える風景は、実際に歩いた時とは別の世界ではないかと思えてくる。
車窓を流れていく風景は綺麗で、歩く人々の楽しそうな笑い声が聞こえる。
「あら……?」
アリシアは、外を見ていてふいにある建物が目に映り、思わず声をもらした。
「どうした?」
静かだったイルヴィスが、アリシアに視線を投げかける。
「あの建物って、教会ですよね?」
アリシアがこんな風に自信なさげに確認するのは、その建物があまりに荒んでいたからだ。
霞んだステンドグラスのある建物にはツタが絡みつき、周囲も雑草が伸び放題。暗くてうっそうとした感じが、長らく人の手が入っていないことを物語っている。
「ああ、あれは5年ほど前まで孤児院だった場所だ。移転して使われなくなった教会を利用していたそうだ」
「孤児院だった、ということは、今は経営していないんですね?」
「財政難だったらしい。あまり詳しくは知らないが」
アリシアは、そうですか、と答えながらも奇妙な胸騒ぎを覚えた。
車内はしばらく無言だった。
イルヴィスは静かに外を眺めていて、話しかけるタイミングがつかめなかったのと、一日遊び回った疲れとで自然とそうなってしまうのだった。
馬車の中でガタガタと揺られながら見える風景は、実際に歩いた時とは別の世界ではないかと思えてくる。
車窓を流れていく風景は綺麗で、歩く人々の楽しそうな笑い声が聞こえる。
「あら……?」
アリシアは、外を見ていてふいにある建物が目に映り、思わず声をもらした。
「どうした?」
静かだったイルヴィスが、アリシアに視線を投げかける。
「あの建物って、教会ですよね?」
アリシアがこんな風に自信なさげに確認するのは、その建物があまりに荒んでいたからだ。
霞んだステンドグラスのある建物にはツタが絡みつき、周囲も雑草が伸び放題。暗くてうっそうとした感じが、長らく人の手が入っていないことを物語っている。
「ああ、あれは5年ほど前まで孤児院だった場所だ。移転して使われなくなった教会を利用していたそうだ」
「孤児院だった、ということは、今は経営していないんですね?」
「財政難だったらしい。あまり詳しくは知らないが」
アリシアは、そうですか、と答えながらも奇妙な胸騒ぎを覚えた。