第一王子に、転生令嬢のハーブティーを

13.夜会準備




 茂り始めた草木の手入れに、枯れた花壇の植え替え。城内の各部屋に飾る花の摘み取りなどなど、庭師の仕事は意外に多い。


 やはねばならないことを一通り終えたミハイルは、ふうっと息を吐いて、にじむ汗を拭った。


 休憩のため、一度ハーブ園の一画にある温室へ戻る。拠点とも呼べる場所だ。



「あっ」



 ミハイルがその温室の中に入ると、そこには二人の女性の姿があった。


 一人は美しく珍しいターコイズブルーの髪をハーフアップにしていて、吸い込まれそうな丸い瞳をを持つアリシア・リアンノーズという名の令嬢。もう一人は、そのリアンノーズ家メイドで、ふんわり巻いた茶髪が印象的な女性、ノア。


 アリシアは伯爵家の令嬢という身分にも関わらず、しょっちゅう単独行動をしており、ミハイルもひやひやさせられることが少なくないが、誰かを連れている時は決まってノアが選ばれている。


 彼女たちがミハイルの仕事場でこうしてくつろいでいる光景も、すっかり慣れてしまった。



「アリシア様、ノアさん。いらしていたのですね」



 声をかけると、ミハイルに気づいたアリシアが笑顔を浮かべた。



「ミハイルさん、お邪魔してます」


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