第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「そんな魔法のようなハーブティーはありませんので、無理のない程度にしっかりと練習なさってください。……ローズヒップティーが入りましたよ」
ミハイルは顔を伏せているアリシアの近くにティーカップを置いた。
赤い色をしたローズヒップティーから漂う香りに、彼女はやっと顔を上げる。
「いい香り。でもこれ、普通のローズヒップティーじゃないわね」
そう言いながら、ティーカップをそっと持ち上げ、軽く揺らしながらゆっくり匂いをかぐ。
口をつけて、静かに味わうように目を閉じたアリシアは、やがて口元に笑みを浮かべた。
「フルーツの香りが混ざっているのね。これは……桃?」
「ご名答。良い桃のドライフルーツを入手したので、ブレンドしてみました」
見事な嗅覚と味覚だ。
ローズヒップは酸味が強いため、桃の味はそう強くないのたが、アリシアにはちゃんと感じ取ることができたらしい。
「すごく美味しい」
「それは良かった。……ノアさんもいかがです?」
ミハイルは近くに控える使用人に声をかける。
「いえ、わたくしは……」
「どうせ多めに淹れています。アリシア様だけでは飲みきれないでしょうから、飲んで頂けると嬉しいのですが」