第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「アリシア様、ローズヒップティーのおかわりはいかがですか?」
「……結構です」
(アリシア様が、ハーブティーのおかわりを断った……!?)
てっきり機嫌を直して喜ぶと思っていたため、ミハイルは思わずアリシアを見返した。
「あっ、イライラしてごめんなさい」
「いえ……こちらこそ出過ぎたことを申しました」
「わたし、これでも不安で不安で仕方ないんです」
アリシアがそう笑う。また弱々しい笑みに戻っていた。
(そりゃそうか……)
ミハイルは反省する。いつも明るい彼女がここまで疲弊するほど頑張っているのだ。夜会への不安がないはずがない。
その準備の中で、イルヴィスからもらった髪飾りに似合うドレスを探すのは数少ない楽しいことなのかもしれない。
「殿下にお淹れするお茶を選ばないと。ミハイルさん、これで失礼します」
「アリシア様っ!」
立ち上がり、さっさと背を向けたアリシアを思わず呼び止めた。何か言いたいことがあったわけではないのだが、呼び止められずにいられなかった。
故に、続く言葉が見つからず、少し黙ってしまった。
「えっと、どうしました?」