第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 アリシアは振り返って戸惑ったように問う。



「……夜会が終わった後」



 ミハイルは一つ一つ慎重に言葉を選ぶ。



「お時間に余裕があればここにいらしてください」


「え?」


「貴女のために、最高のハーブティーを用意して待っています。なので、夜会には肩の力を抜いて参加なさってください」



 アリシアはしばらくポカンとしていたが、やがて声を出して笑った。



「ふふ、ミハイルさん、さっきと言ってること違いますよ」


「ああですから、舐められない程度に頑張りつつ、肩に力を入れすぎないように……」


「難しいこと言いますね。でもそれなら、ハーブティー、楽しみにしてます」



 そう言って会釈した今度こそアリシアは、今度こそ温室を後にする。続くノアは、ミハイルに向かって主人よりさらに深くお辞儀をした。



「はあ」



 ミハイルは深く息をついて椅子に座る。

 誰かを励ますというのは難しい。柄にもなく焦ってしまったではないか。



(あとは、上手くいくことを祈るだけだな)



 ミハイルは自分用に新しくティーカップを出し、ポットに残ったローズヒップティーを注いだ。


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