第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
本番、緊張してせっかく覚えた名前を忘れたらどうしよう。何か礼儀にかなわないことをしてしまったりしたら……。
(ダンスも完璧になったとは言い難いし)
相手の足を踏む回数は減ったが、自分でも動きがぎこちないのはわかる。
イルヴィスや他の参加者の足を思い切り踏みつけるようなことがあったらと思うと血の気が引く。
今回の件で、アリシアは自分が今までいかに責任の少ない立場で自由にしてきたのか痛感させられた気がする。
こんな公の場──それもアリシアが一番の注目を集めるような機会に、何か恥を晒せば、いったいどれだけ迷惑がかかるだろう。
(って、せっかくリラックスしてたのにそんなこと考えたらまた緊張しちゃうじゃない!だめだめ、他のこと考えよう……あ、夜会終わりにミハイルさんが極上のハーブティーを淹れてくれるとか何とか言ってたわね)
「お嬢様。そろそろお時間ですよ」
「はひっ、あ……もう?」
アリシアは大きく息を吸い、鏡の自分に向かって微笑みかけた。大丈夫、わたしはリラックスできてる。
これだけ準備してきたのだ。上手くいくに決まっている。