第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
外に出ると、天気はあまり良くなかった。
暗くて分かりにくいものの、雲はどんよりとしていて、星一つ見えないほど空を覆っている。激しくこそないが、雨も降っている。
「これはさらに荒れるかもしれませんね」
ノアが心配そうに言う。夜会に参加できるのは招待客だけなので、侍女を連れていくことはできないが、城まで付き添ってくれている。今はいつも以上に彼女の存在が嬉しい。
「あまり荒れると帰れなくなってしまわないかしら……」
「まあ、その可能性もありますね。でも、状況を見て早く切り上げられるのではないですか?」
「それもそうね」
城に到着した頃にも相変わらず雨は降っていたが、特に強くなったりはしていなかった。
足もとに気を配りながらゆっくり歩き、城の中に入る。
「お嬢様、ご武運を」
「ありがとうノア。行ってくるわ」
ノアに別れを告げ、アリシアは会場となる部屋を探す。
その場所は、賑やかな話し声が聞こえてくるのですぐにわかった。
(うわ……やっぱり人、多いわね。結構な規模のパーティーっていうことよね)
会場内にこっそりと入り、誰にも気が付かれないように壁際に……というわけにはいかないだろう。さすがに今日は。