第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
大勢にここまで注目されるという経験は今までにない。つい怯みそうになるが、アリシアの頭にこの二週間の努力がフラッシュバックし、思い直す。
殿下の婚約者らしく、堂々とした振る舞いを教えこまれたではないか。
アリシアはスカートの裾を少しつまんで、お辞儀をした。すると同時に歓声が上がった。
(うーん、これが第一王子の婚約者になる、ということなのね……)
身に付けたつもりでいた所作やマナーを、苦手なダンスと同じくらい時間をかけて復習させられた理由がよくわかった。こうもに多くの目に見られていては、ちょっとしたボロが出れば速攻バレてしまいそうだ。
さすがに初めから注目されているのを知った状態では踊り辛いので、ダンスはそこで終わり、改めてイルヴィスと挨拶をしてまわることになった。
あんなに注目された後なので、もう怖ものはない。
「いやあ、殿下は美しいお方を見つけられましたな」
「お目にかかれて光栄ですわ。ムリス侯爵」
参加者のリストが頭に入っているおかげで、挨拶に回るのも楽だ。
そして大抵の人はアリシアに好意的な態度を示してくれる。だが、同じくらいの歳をした令嬢たちから向けられる視線はやはりどこか冷たい。