第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
何度も同じような言葉を繰り返し口にし、ようやく一通り挨拶を終えた。
「疲れたか?」
「少し……」
イルヴィスに気遣わしげに尋ねられ、何とか笑顔をつくって答えるが、実際かなり疲れていた。
夜会が始まってからダンスと挨拶をしただけなので、お腹も空いて、振る舞われている美味しそうな料理が目に毒だ。
そんなアリシアの気持ちを察したのか、イルヴィスが言う。
「悪いが、私は少し席を外させてもらう。貴女は適当に休んでいるといい」
アリシアは背を向けたイルヴィスを見送ってから、色鮮やかな料理に目をやった。
どれから食べようか。ウェイターから飲み物を受け取り、考える。
(お腹は空いてるけど、とりあえず甘いものが食べたいわね)
キラキラ輝く小ぶりのケーキに手を伸ばそうとした時、後ろから誰かにドンと押された。
その衝撃で、持っていた飲み物がバシャッとアリシアのドレスに思い切りかかる。
「あ〜ら、誰かと思いましたら、身の程知らずの……えーと、何とかいう伯爵令嬢ではありませんこと?」
「……サラ様」
ぶつかってきたその人──サラは、にんまり口に弧を描きながら髪をかきあげる。