第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


(だけどもしストーリー通りに婚約破棄されたらどうすれば……)



 そんな不安がアリシアを襲う。

 国の外れの森で暮らす。それはそれで楽しそうだと思わなくもないが、問題はリアンノーズの家にかかる迷惑だ。

 あの第一王子からの婚約を破棄されたとなっては、アリシアだけではなく、リアンノーズ家への世間の印象も最悪になる。

 大好きな家族たちにそんな迷惑がかかるのは、とても耐えられない。



(でも、こんなに喜んでくれている家族に、婚約を断りたいなんて言えないし……そもそも王家からの申し出を断れるはずがないわね)



 やはりこの話を受け入れた上で、婚約破棄されないよう対策を考えていくしかない。


 そう決心するも、今度はまた違うモヤモヤが心に出てきた。



(わたし、愛されないのか……)



 漫画の中で、イルヴィスがアリシアを愛したことはなかった。

 必要なのは、妃にふさわしい品格、教養、家柄。彼自身の感情などは、妃を決める上で少しも参考にはしていない。


 前世の少女漫画好きだった“彼女”ほどでないにせよ、アリシアにだって人並みに恋愛への憧れはある。

 アリシアの2人の姉たちは、いずれも政略結婚のような形で嫁いでいるが、2人とも夫にはよく愛されていて、幸せそうだ。


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