第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
サラは真剣にそう訴えかける。
「……」
イルヴィスは深くため息をつくと、感情を感じさせない、いつもよりいくらか低い声で言い放つ。
「不愉快だ」
「……え?」
「聞こえなかったか?不愉快だ、と言った」
窓から入った稲妻の光が、イルヴィスの横顔を照らす。
サラの腕を掴んでいたロベルトまでも、イルヴィスの気迫に思わず力を緩めている。
「アリシアを妃にしたいと所望したのは私だ」
「で、ですから、その理由を……」
「何故知りたい?少なくとも、アリシアはあなたより王妃に向いていると思うが?」
「っ……!?」
「身の程もわきまえず、他人の欠点を探しては愚弄するような者に、妃として隣で支えてもらいたい──私がそう思うとでも思ったか?」
サラは何か言おうと口を開くが、言葉が見つからなかったのか、観念したようにうつむいた。
しばらく黙り込んだ末、ぼそぼそと弱々しい声で言い出した。
「……アリシアさんなら、もう少し先の部屋にいるはずですわ。都合良さそうな部屋を適当に選んだので、どの部屋だったかはわかりませんが、内側から扉が開かないように靴をつっかえさせた上に近くにあった台座で押さえてあります。見たらわかるかと」