第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
これまでで一番大きな雷鳴が響いた。
それとほぼ同時に、ガチャンと何かが割れるような音も聞こえてきた。
「ロベルト、そのまま彼女をお送りしろ」
イルヴィスはロベルトにそう命じ、先ほどの音が聞こえてきた方へ向かって再び駆け出した。
音がした方へ近づけば、サラが言っていた通り、台座で押さえられた扉はよく目立ち、すぐ見つけることができた。
台座をどかし、挟んであった靴を取った。アリシアが履いていた靴だ。
勢いよく扉を開く。耳を押さえながらうずくまるアリシアがそこにはいた。そばには割れたティーカップ。あの音の原因はこれか。
アリシアがゆっくりと顔を上げた。目が涙で少し潤んでいる。
「イルヴィス……殿下……?」
その声は震えていた。
イルヴィスは無意識のままに彼女に駆け寄った。そのままそっと彼女を抱きしめる。
「もう、大丈夫だ」
優しく声をかけると、アリシアは小さく嗚咽を漏らした。