第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「アリシア、部屋を用意させるから今日はこのまま城に泊まるといい」
「え、そんな」
「この天気では馬車を出せないし、近くの宿は埋まっているだろう」
「あ……そうか」
荒れ狂う空と響く雷鳴に納得する。どうやらご厚意に甘えるほかなさそうだ。
アリシアが丁寧に感謝の言葉を口にした時、誰かが開いている扉をコンコンとノックした。
目を向けると、そこには気遣わし気にのぞきこむミハイルと、その後ろで視線を合わせようとしない第二王子ロベルトの姿があった。
「ロベルト王子から話は聞きました。アリシア様、ご無事で何よりです」
ミハイルは優しい微笑みを浮かべる。
「はい、お陰様で」
「ところでアリシア様、約束を覚えていますか?」
頭を下げたアリシアにミハイルは手に持っている瓶を見せた。中には何かのドライハーブが詰まっている。
「……!もちろんです!最高のハーブティーを用意してくれるって」
「この天気の中、アリシア様に庭を歩かせるわけにはいかないので、約束していたハーブティー、こちらからお持ちしました」
アリシアはその言葉に、今日一番の笑顔を見せたのだった。