第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



 テーブルで兄と向かい合い、二人きり。かなり異様な光景だな、とロベルトは思う。

 イルヴィスとロベルトは、決して不仲というわけではない。ロベルトが一方的に劣等感を抱いていたり、イルヴィスが弟にそう強い関心がないのは確かだが、今日のように普通に話したりもする。



(けどまあ、こうやって改めて二人だけで向かい合うようなことはまずないよな)



 何故だか知らないが、アリシアと庭師のミハイルがこんな時間にお茶を振舞おうとしているらしい。

 別段それは構わないのだが、こうしてイルヴィスと二人で待たされなければならないのは、愉快とは言い難い。



(というか兄上もしゃべらないし、そろそろ気まずいな)



 ロベルトがちょうどそう思ったとき、不意にイルヴィスが口を開いた。



「ロベルト、先ほどはすまなかったな」



 いきなり謝られた。何のための謝罪かわからず反応できないでいると、イルヴィスは重ねて言う。



「夜会、最後まで見ないで勝手に抜け出した上、お前まで巻き込んでしまった」


「ああ……」



 夜会を途中で抜けたのはともかく、行方不明になったアリシアを探すのは自主的にやったことだ。謝られる筋合いはない。


< 149 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop