第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
しかし、漫画のイルヴィス王子を思い出す限り、どうあがいてもアリシアを愛するようにはならないだろう。
(どうせ結婚するなら、姉様たちのように愛してくれる人と結婚したかったな)
イルヴィスにも、漫画の最後の方で、主人公を少し気にしているような描写はあったような気がするが、恋心なのか言及されることなく終わったはずだ。他人に対してそういう気持ちは抱かない人なのかもしれない。
「はあ」
「アリシア。緊張するのは分かるが、せめて殿下の前ではいつも通りの笑顔を見せなさい」
何度目か分からないため息に、父オリヴィオがとうとう苦言を呈した。
「……もちろん分かっています、お父様。作り笑いは得意ですし」
「作り笑い……」
オリヴィオが苦々しい表情を見せたところで、馬車が止まった。
馬車を降りると、視界いっぱいに大きな城が映る。
城へ来たのは初めてではないが、グランリア王国の象徴ともいえるこの場所は、来る度に圧倒されてしまう。
高くそびえ立つ城壁の向こうに見える、美しい石造りの建物。庭も広大で、それだけでリアンノーズ家の敷地いくつ分だろうか。
アリシアは、父にバレないように、もう一度だけこっそりため息をついた。