第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「……正直、兄上があそこまでアリシア嬢を大切にしているというのは意外でした」
アリシアを探しているときの必死な様子や、彼女を悪く言っていたサラを見る冷えきった目。
それらの行動一つ一つが、アリシアに対する兄の思いを物語っていた。
「兄上とアリシア嬢との関係は、もっとドライなものだと思っていたので」
「そうか?」
「はい。立場上、妃をめとらないわけにはいかないから仕方なく婚約しただけで、相手にはそこまで関心がないものだと……」
「自分の婚約者に無関心な方が問題だろう」
「まあ、それはそうですが」
冷徹と謳われるイルヴィスであれば、婚約者にすら興味がないというのもイメージに合いそうな気もするが。
ロベルトは、この機会を逃すと二度と聞けない気がして、思い切って尋ねた。
「兄上は、アリシア嬢のことを……愛してますか?」
聞かれたイルヴィスは、少しも動揺した様子はない。それどころか、口元に微笑を浮かべていた。
「私は、アリシアのことを一人の女性として愛したことはない」
「……」
「……と言ったら、お前は私から彼女を奪いに来るか?」
「は……??」
動揺させられたのはロベルトの方だった。思わず大きな音をたてて立ち上がった。