第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「な、何を」
「兄弟でも、あまりお前と似ていると感じたことはないが、まさか女の好みが似ているとはな」
「あ、兄上?」
焦る気持ちが完全に表に出ている。ロベルトはそう自覚しつつ、引きつった笑みを浮かべて、髪をぐしゃりとかきあげた。
(兄上は、俺の気持ちを知っていたというのか?)
イルヴィスには自分のアリシアへの想いを隠してきたつもりだった。なのに何故。
狼狽えるロベルトのことをどこか寂しそうな目で見ながら、イルヴィスは言った。
「私がアリシアとの婚約を報告したときのお前の反応、よく覚えている」
「あの時の?」
「自覚はないかもしれないが、祝いの言葉を口にする表情と声は絶望に満ちていた」
「っ……はは。そう、でしたか」
何だか力が抜けて、腰を下ろした。
左手で顔を覆いながら天井を仰ぎ、乾いた笑い声を上げる。
(格好悪い)
昔から何をしても勝てなかった兄。本気で好きになった女性がよりによってその兄の婚約者で、そのことを兄にも知られている。
もうどのような反応をすれば良いのかわからない。
「そうです。俺は彼女のことが好きです。貴方との婚約が決まる前からずっと」