第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



 イルヴィスは何と言うだろう。挑発の意味を込めて、ロベルトはまっすぐ兄を見据える。



「諦めようとは思いましたよ。しかしその一方で、兄上にアリシア嬢への気持ちがないのなら、俺にもチャンスがあるかもしれないとも思っています」



 イルヴィスは力強く見返してきた。その目は鋭いながらも、奥にはどこか楽しんでいるかのような気持ちがあるような気がした。



「先ほど言っただろう。『女の好みは似ているようだ』と」


「……」


「周りがどのように思っているか知らないが、私は彼女のことを愛している」


「……なるほど。俺には諦める以外の選択肢はない、と」


「ああ、誰かに譲ってやるつもりは微塵もない。……まあ、現状は婚約したのに私が片想いしているように思えてならないが」



 途方に暮れたようなその物言いに、ロベルトは思わず吹き出した。イルヴィスはムッとしたように顔を歪ませる。



「笑い事ではない」


「大丈夫ですよ。少なくとも俺よりは好かれてます」



 というか自分は特別嫌われているかもしれないが、とロベルトは思う。会う度にあのような無理やり作り出した感じの、わざとらしい笑みを向けられるのは結構落ち込むのだ。


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