第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



 しばらく笑ったロベルトは、やがてふっと笑みを消し、静かな声で言った。



「兄上の気持ちはわかりました。ですが……もし貴方が彼女を少しでも悲しませるようなことがあれば、その時は迷いなく奪いに行くので、そのつもりで」


「肝に銘じておこう」



 言いたいことは全て伝えた。兄とこうやって正直な言葉を交わしたのはいつぶりだろう。

 これまで嫉妬心から心理的に距離を置いてしまっていた。その距離が今、少しは縮まったのではないだろうか。

 このような形ではあるが、間違いなくアリシアという存在のおかげだ。

 いつもそうだ。自分の中で何かの殻を破ったと感じるようなとき、いつもそのきっかけを与えるのは彼女だ。



 嫌われていたって、兄の愛する相手であったって構わない。勝手に想い続けることくらいは、許してもらおう。


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