第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
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「ねえ、ミハイルさんってもしかして──ノアのこと好きだったりしませんか?」
「は……??熱っ!」
ミハイルは何事かというようにアリシアに顔を向けた。その拍子に手が鍋にあたったらしく、熱さに表情を歪ませた。
普段落ち着きを保ち、王族相手でもしっかりと振る舞えるミハイルが、狼狽えている。
「何故いきなりそんなことを……?」
「暇だったので」
「ったく……。どうしてそう思ったんです?」
「いつもよく見てるじゃないですか。ノアがハーブティーの味を気に入るかどうかいつも心配そうにしてるし」
いたずらっぽく言ってやると、ミハイルは大きく息をついた。
やけどになってないか手を確認しながら呟く。
「自分への好意には疎いくせに、他人のことには敏感なんですか……」
前世から引き継がれた少女漫画脳を舐めないでほしい。観察力だってけっこう自信がある。
自分へ向けられる好意だって、向けられた経験がないから何とも言えないが、別に疎くはないと思う。
「それで、実際どう思ってるんですか?」
「……ノアさんは、素敵な女性だと思いますよ」
「でしょ?わたしが一番信頼している侍女だもの。お似合いだと思うけどなあ」