第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 少し心配したが、二人の反応は上々だった。



「なるほど、確かに優しい味だ。ミルクの味が強いが、ハーブの香りも程よく立っている」


「ああ。兄上の言う通り優しく、甘みもあって飲みやすい」



 三者がそれぞれミルクティーを飲む間、静かに時が流れた。

 その静けさとカモミールミルクティーの効果が相まって、一気に眠気が襲ってくる。



 王子たちの前でウトウトしてしまわないよう、アリシアが一人睡魔と葛藤していると、突然ロベルトが言った。



「そういえば、俺は結局アリシア嬢と一曲も踊れなかったな」


「へ?」


「どうだろう。音楽がないのは寂しいが、今から俺と踊って頂けないか?」



 ぼんやりとする中、ロベルトから差し出される手を無意識に手を重ねた。

 そしてその直後にはっと覚醒する。



「え?いや、あのえっと……」



 慌てて手を引っ込めようとするが、それより早く手をギュッと握られた。


 ロベルトは微笑を浮かべてイルヴィスに確認する。



「兄上、よろしいですか?」


「……一回だけだぞ」


「了解」



 イルヴィスは少しだけ眉をひそめたが、あっさりOKを出した。できればダメだと言って欲しかった。


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