第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
ノアだった。話を聞けば、アリシアを待機していた彼女も昨夜は来客用の部屋へ通されたらしい。
そこで、アリシアの身におきた一連の出来事も聞いたとのことだ。そのせいか、ノアは気遣わしげにアリシアを見ている。
「気分はいかがですか?」
「万全ではないけど、別に悪くはないわ」
本当は最悪な気分だが、下手に心配させるわけにもいかないので、誤魔化しておいた。
ノアは窓のカーテンを開けた。外は昨夜の雨が嘘のように快晴である。
「朝食を用意していただいているので、お持ちしますね」
「ありがとう。……ねえ、ノア」
「はい」
「もし、イルヴィス殿下に婚約破棄を言い渡されるようなことがあったらどうしよう」
「え?」
あまりに唐突すぎたからか、ノアは困惑した表情を見せる。
それからキッパリ言い切る。
「それはさすがに、ありえないですよ」
「え、どうして?彼は、わたしが妃に向いていないと判断したらいつだって婚約を破棄してくるかもしれないわよ?」
何故そこまで確信を持って言えるのだろう。半分ムキになって問い返す。
「だって殿下は完全にお嬢様に惚れ込んでいらっしゃい……いや、それはお嬢様がご自分で気づくべきですね……」