第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
先程と違い、ノアは今度はボソボソとした言い方をしてきたため、よく聞き取れなかった。
だがアリシアがもう一度聞く前に、ノアは部屋を出て行ってしまった。
(ありえなくないでしょ。結局イルヴィス様がわたしを婚約者に選んだ理由も謎のままだし……代わりはいくらでもいるのよきっと)
実際にアリシアが夢で見たようにヒロインを殺そうとすることはないだろう。だが、彼女に嫌がらせをした者たちから黒幕に仕立てあげられる可能性くらいならある。
悪い噂が立てば、それを嫌がったイルヴィスが婚約破棄してくるかもしれない、というのは考えすぎだろうか。
(まあ、その程度のスキャンダルで見捨てるほど冷たい人じゃないというのはよく知ってるけど)
ふと、イルヴィスが昨日アリシアを見つけ出して優しく抱きしめてくれたことを思い出す。
あたたかくて優しくて……すごく安心した。
(というかわたし、昨日いろいろと殿下に迷惑をかけてる……)
改めて謝罪と、泊めてもらったお礼をしなければ。
アリシア朝食を持って戻ってきたノアに、そのことを伝え、あまり行儀がよくないが、時間がもったいないので朝食と同時に身だしなみを整えてもらうことにした。
ホカホカと湯気を立てるスープとパンを食べながら、ノアに髪を結われる。いつものハーフアップだ。