第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
顔が近い。一段と頬が熱くなってきたような気がする。
目を合わせられないわけは自分でもよくわからない。昨日見苦しいところを見せて気まずいからだろうか。
上手く答えられず固まっているうちに、突然扉の向こうから誰かの声が聞こえた。
「兄さんに話があると言われて来た。入る」
「お待ちくださいデュラン殿下。今はアリシア様が……」
番人の制止を聞かず、声の主は勢いよく扉を開き、室内へ入ってきた。
(あっ……!)
アリシアは振り返り、そこに立つ人物を見て声を上げそうになる。
銀にも見える金髪に、無気力そうな瞳。
デュラン・グランリア。ちょうど夢に出てきたばかりの、この国の第三王子である。
そしてその後ろには──
(主人公……!)
無意識に呼吸を止める。
ツヤのある黒髪に、白い肌。美人というより可愛い系の顔立ちは、さすがはヒロインだと言いたい。
デュランの後ろで萎縮したようにキョロキョロしているところは小動物然としていて、守ってあげたくなる。
何故、この二人がここにいるのか。よりによって、あんな夢を見たばかりのこのタイミングで。
漠然とした不安で胸がザワザワと騒ぐ。気分が悪い。
イルヴィスがふっと息を吐き、二人に目を向けた。