第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
アリシアに微笑みかけられたノアは、一瞬驚いたようにポカンと口を開けたが、その表情はすぐにパッと晴れた。
「はい!今すぐ!いつもの店の新作ドレスが届いたのでお持ちします」
「あら、楽しみ。あの店のデザイナー、センス良いから新作もすぐ流行っちゃうのよね。誰よりも早く着られるのは嬉しいわ」
「確かに毎回素敵なデザインですが、流行るのは恐らくお嬢様が着ているからというのも大きいと思いますよ。宣伝の意味もこめて発売前にお嬢様に送られているのですから」
「あら、わたしが着るだけで宣伝になんてなるのかしら。
あ、ノア。悪いけどこの本戻しておいてもらえる?」
ノアは嬉しそうに辞典を受け取ると、軽い足取りで部屋を出た。
アリシアは、ノアが戻ってくるまでの間に、ベッドの下からノートを取り出した。
この世界が前世で読んだ漫画の世界だと気がついた頃、覚えている限りを書き出したノートだ。
ヒロインについて書き込まれたページを開くが、そもそも漫画の内容自体詳しく覚えているわけではないので、ヒロインについての情報も大したものはない。
アリシアは、そのページをビリっと音をたてて破いた。
漫画のアリシアと、自分は違う。漫画のストーリー通りに進んでしまうのでは、という心配はやめにしよう。