第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



「アリシア、顔が明るくなったな」



 王宮。既に日課となって長い、婚約者とのティータイム。


 カップにミントティーを注いでいると、不意にイルヴィスが言った。

 アリシアは、「え?」と手を止め、イルヴィスを見た。



「悩みは解決したのか?」


「……悩んでいるように見えましたか?」


「違うのか?」


「まあ……違いません」



 悩んでいたことを認めたアリシアを見て、イルヴィスは、思い通りだというように笑った。



「それで?悩みはなくなったのか?」


「はい」



 アリシアは答えて、爽やかな香りが漂うお茶を差し出した。

 スっと鼻を抜けるような香りは初夏に似つかわしいが、そろそろホットではあついだろうか。アイスティー向けのハーブティーも用意しなければ。


 そんなことを思いながらイルヴィスの向かいに座ったときだった。



「殿下、失礼いたします」



 イルヴィスの側近の一人が部屋に入ってきた。彼はアリシアに会釈してからイルヴィスに近づき、何やら耳打ちした。

 何か執務に関することらしく、イルヴィスは一つうなずくと「すぐに行く」と答えてティーカップに手を付けた。



「お仕事ですか?」


「ああ。せっかく淹れてもらったのにすまないな」


「いえ。お茶はいつでも淹れられますからお気になさらないでください」


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