第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
言われてアリシアは、思わず目を見開いた。
確かにあの日、アリシアは香水代わりにお手製のラベンダー水を使っていた。普通の香水は香りが強くて苦手だからだ。
だが挨拶のため近くで話した時間など、ほんの一瞬だ。それだけでラベンダーの香りに気が付いたというのには驚きを隠せない。
「……よくお分かりになりましたね」
「懐かしい香りだったからな」
「懐かしい?」
「そんなことより本題だ、アリシア嬢」
イルヴィスはまっすぐアリシアの目を見て言う。
吸い込まれそうな瞳に少したじろぎそうになったが、何となく目を逸らしたら負けな気がして、アリシアはその目を見返した。
「手紙にも記した通り、貴女には私の妃になってもらいたいと考えている」
「……わたしからこの話をお断りする理由はありません。ですが、差し支えなければ何故わたしをお選びになったのか教えて頂けますか?」
それがアリシアの一番知りたかったことだった。
リアンノーズ家は飛び抜けて力のあるわけでもないただの伯爵家。しかしあのお茶会には公爵家や侯爵家の娘もたくさんいた。
それと別に、妃としてのきちんとした教養や品格を求めるのなら、せめて学園で好成績を残した者を選ぶべきだ。