第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
その様子を見ていると、ニーナの表情が再び曇ったような気がした。やはり見間違いではない。
「ニーナさん?」
声をかけると、ニーナはハッとしたようにアリシアに視線をやる。その視線は困ったように泳いでいる。どこか様子がおかしい。
「大丈夫?」
「……何がですか?い、いただきます」
ニーナは焦ったようにティーカップを口もとへ運ぶ。ゴクリと飲んで、ふっと息をついた。
「美味しいです」
「本当?なら良かったけど……」
しかしどう見ても、「美味しい」と思っている表情ではない。もしかして苦手なのに無理して飲んでいるのだろうか。
「口に合わないなら無理して飲まなくても……」
中身を一気に飲む彼女に、アリシアが言いかけた瞬間だった。
ガチャン、という派手な音が部屋に響いた。
見れば、ニーナの手からティーカップが離れ、白く美しいティーカップがテーブルの上で砕け散っていた。
それと同時に、椅子に座っていたニーナが、バタりと倒れた。
「ニーナさん!?」
慌てて駆け寄ってその顔を見ると、表情が苦しそうに歪んでいた。
「大丈夫!?待ってて、すぐに人を呼んでくるわ!」
いったいどうしてしまったのだろう。アリシアは不安に押しつぶされそうになりながら、助けを求めるべく回廊を走った。