第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「良かった、目を覚ました」
「デュラン、様……」
「このまま起きなかったらどうしようかと思った」
「ご心配をおかけして、申し訳ございません」
「本当に」
デュランはベッドに近寄り、何とか上体を起こしたニーナの手を握る。
女慣れはしていないはずなのに、サラりと天然でこういうことができるのは、流石はデュランだ。
グランリア王国の第三王子。大好きな人。手を握られるのはドキドキするが、純粋に嬉しい。
普通なら一介のメイドなどと関わることすらほぼない人物。しかし、ニーナとはこのように「主従関係以上恋人未満」の関係である。
このような関係であれるのは、ひとえにニーナが主人公であるからに他ならない。
しばらく見つめ合っていた二人に、医師が見かねたように咳払いした。
「デュラン殿下。ニーナと仲良くされるのは自由ですが、あまり行き過ぎるとまたイルヴィス殿下から注意を受けますよ」
この前呼び出されたことについて言っているのだろう。
デュランは不機嫌そうにそっぽを向いて言った。
「さっきミハイルにも同じようなことを言われた。別に兄上に気にされるような関係ではないし、俺が誰と親しくしようがとやかく言われる筋合はない」