第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
22.協力要請
■
「……暇だわ」
アリシアがそう呟いて天井を仰いだ。
テーブルの上には、始めて早々に諦めたらしい、布をセットした刺繍枠が転がっている。
刺繍は苦手なようだ。
ピアノやバイオリンなんかも、昔は出来ていたが今はからっきし。自分の主はとことん普通の令嬢らしいことが苦手らしい。ノアは苦笑いしながら思う。
「刺繍がダメなら、編み物に挑戦してみますか?ああ、でも暑いのでレース編みが良いですかね」
「……遠慮しておくわ。上手くできる未来が見えないもの」
「では本でもお読みになります?」
「もう昨日までにさんざん読んだわよ」
アリシアはテーブルに突っ伏し、足をバタバタと動かした。ノアはその様子に、胸の辺りがキュッと痛む。
アリシアは今、屋敷で謹慎状態にある。
数日前、王宮で働くとあるメイドにハーブティーを振舞ったところ、そのメイドは中毒症状を起こして倒れたらしい。何やら毒が盛られていたとのことで、あろうことかアリシアが疑われているというのだ。
ノアにはどういう経緯でアリシアがそのメイドにハーブティーを淹れることになったのかはわからない。だが、アリシアがそんなことをするはずがない。
何故あの時自分が付き添っていなかったのか。悔しくて仕方がない。
「……暇だわ」
アリシアがそう呟いて天井を仰いだ。
テーブルの上には、始めて早々に諦めたらしい、布をセットした刺繍枠が転がっている。
刺繍は苦手なようだ。
ピアノやバイオリンなんかも、昔は出来ていたが今はからっきし。自分の主はとことん普通の令嬢らしいことが苦手らしい。ノアは苦笑いしながら思う。
「刺繍がダメなら、編み物に挑戦してみますか?ああ、でも暑いのでレース編みが良いですかね」
「……遠慮しておくわ。上手くできる未来が見えないもの」
「では本でもお読みになります?」
「もう昨日までにさんざん読んだわよ」
アリシアはテーブルに突っ伏し、足をバタバタと動かした。ノアはその様子に、胸の辺りがキュッと痛む。
アリシアは今、屋敷で謹慎状態にある。
数日前、王宮で働くとあるメイドにハーブティーを振舞ったところ、そのメイドは中毒症状を起こして倒れたらしい。何やら毒が盛られていたとのことで、あろうことかアリシアが疑われているというのだ。
ノアにはどういう経緯でアリシアがそのメイドにハーブティーを淹れることになったのかはわからない。だが、アリシアがそんなことをするはずがない。
何故あの時自分が付き添っていなかったのか。悔しくて仕方がない。