第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 どうやら、自分の手で淹れたハーブティーを飲んだ人間が目の前で倒れたことが、トラウマになっているらしい。

 ハーブティーのことが大好きで自信があっただけに、あの出来事は相当ショックだったに違いない。



「お嬢様。お嬢様は何もしていないでしょう?」



 ノアは、気だるげに頬杖をつくアリシアに問いかける。

 当たり前だ、という答えを期待していたのに、アリシアは疲れたように笑った。



「そうね。したという自覚はないわ」


「それはそうでしょう。やっていないのですから」


「でも、あの状況でわたし以外がニーナさんのティーカップに毒を盛るなんてこと、できないわ」


「何を……」


「本当にわたしはやっていないのかしらね」



 虚ろな目をしながら発せられたその言葉は、ノアに言っているというより、自分自身に問いかけているように聞こえた。

 何を言っているのだろう。ノアは混乱した。

 まるで、自覚はなくとも自分が犯人だと思い込んでいるかのようだ。



「お嬢様。お言葉ですが、あの状況でお嬢様がやっていないのなら、例のメイドの自作自演を疑うべきなのでは?」


「自作自演?どうして彼女がそんなことをするのよ」


「それは……お嬢様を陥れるためとか」



 少し返答に困る。



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