第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


「ミハイルさん、お嬢様は昔からあのように好奇心が強く、笑顔を絶やさない明るい方だった……というわけではないのです」



 ノアは、昔のツンと澄ましながらも、寂しそうでもあるアリシアの姿を思い出し、クスリと笑った。



「それは少し意外ですね。言い方はあれですが、幼い頃からじゃじゃ馬だったのかと」


「むしろ逆です。お淑やかで礼儀作法も完璧。非の打ち所のないご令嬢でした。ただ……滅多に笑わず、常に退屈そうにしていました」


「……想像ができません」


「そうでしょうね。わたくしが初めてお嬢様と出会ったのはもう10年ほど前になりますが、幼い女の子相手に『気難しそうだ』なんて思ったものです。……少しだけ、わたくしの昔話をしても良いですか?」



 ミハイルは何も言わず、自分の分の紅茶に手を付けた。それを肯定だと受け取り、そのまま続ける。



「わたくしは、没落したとある田舎男爵家の長女です」






 アリシアと出会ったのは、父に付いてリアンノーズ家を訪れたときだった。

 整った顔立ちに、美しいターコイズブルーの髪。挨拶も忘れてしばらく見入ってしまった。


 対してアリシアは、ノアには微塵も興味を見せず、しっかりと教育された優雅な仕草で挨拶をするだけだった。


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