第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
父はリアンノーズ家の当主、オリヴィオを度々訪ねた。用件はわからないが、今思えば金を無心していたのではないかと思う。
田舎暮らしだったノアは、街に出られることを楽しみに毎度同行しており、アリシアともその都度顔を合わせていた。
しかし、いつの間にかリアンノーズ家を訪れることもなくなった。
理由は簡単。家がしだいに傾いてゆき、完全に立ち行かなくなったのだ。財産を失い、一家は明日も知れぬ身となった。
そんな状況に途方に暮れた父は、ノアを売った。
ノアには兄が一人いた。父は、家族全員で支え合い生きていく道ではなく、ノアを犠牲に、自分と愛する妻、長男が少しでも楽に生きられるようにする道を選んだ。
ノアは取り押さえられながら、助けを求めて父を見ると、彼はスっと目をそらした。
多額の金を受け取る父を見て、ノアは初めて「絶望」というものがどんなものなのか知ったように思う。
売られた先は、悪い噂の絶えない裕福な老人の元。自分の元で働く女に片っ端から手を出すことで有名だった。
ノアは連れて行かれる途中、ちょっとの隙を見て逃げ出した。
逃げて逃げて逃げた。今考えても、よくあそこまで必死になれたものだと思う。
数日に渡り逃げた末、見覚えのある場所にたどり着いた。