第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


「毎日悪夢にうなされながら、這いつくばって生きていくぐらいなら……死んだ方がずっとマシだわ」


「……何ですって?」




 死んだ方がマシ。その言葉を口にした瞬間、アリシアのまとう空気感がガラリと変わったのがわかった。



「……ノアさん。今の言葉、取り消しなさい」



 その口調は、ゾッとするほど冷ややかで、それでいて今にも泣き出しそうな痛々しさがあった。



「貴女は健康な身体に生まれて、飢え死にすることもなく生きている!いったい何が不満なの!?生きることが許される限り、どんなに泥臭くて見苦しい生き方でも、生き続ければ良いじゃない!」



 そうまくし立てた彼女は、実際泣いていたかもしれない。

 ノアは、グッと息をのみ、小さな声で確認するように問うた。



「……それは、自分の運命を受け入れて、売られた先で大人しく生きていろという意味ですか?」


「違うわよ」


「ならいったい……」


「ノアさん。リアンノーズ家(うち)で働きなさい」


「え?」



 突然の提案。思わず顔を上げると、アリシアは穏やかに微笑んでいた。


 だが、ノアが何か言う前に、今までアリシアの勢いに圧されて黙っていた周りの男たちが意を唱えた。


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