第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


「お嬢さん、悪いがこの女は俺らが連れて帰らなきゃなんねえんだ。じゃねえと金がもらえねえ」


「いくら?」


「は?」


「あなたたちがノアを連れて帰って貰える報酬はいくらかしら?リアンノーズ家がその2倍を払うわ」



 アリシアは、綺麗なターコイズブルーの髪をさらりとかきあげ、堂々とした態度で男たちに告げた。

 男たちは顔を見合わせ、何やら相談した末に「わかったよ」と言ってその場を離れて行った。


 残されたノアは呆気にとられてしまい、どうして良いかわからず彼女に視線をやった時だった。



「怖かった……」



 今まで堂々としていたはずのアリシアが、へにゃりとへたり込んだ。



「怖かった、の?」


「当たり前じゃない」



 少し怒ったように言うアリシアが少しおかしくて、つい笑みがこぼれた。それを見たアリシアも、安心したように笑った。



「ノアさん。うちで働いて欲しいとは言ったけど、別に強制じゃないの。もし良ければ、ね」



 アリシアは不安そうに言うが、ノアの気持ちは決まっていた。



「……さっきはわがままなこと言ってごめんなさい。その、こちらこそお願いします」


「良かった。もう二度と、死んだ方がマシだなんて言わないでね」


「……はい!」



 この日アリシアに救われたノアは、彼女の笑顔を守るためなら何でもすると心に誓った。

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