第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


「殿下……」



 アリシアに気づくと、肩まで伸びたサラリとした金髪を耳にかけ、顔を向けてくる美しい婚約者。さすがに彼のことを見紛うはずがない。

 色々と考えていた直後だけに、どんな顔をしていいのかわからない。


 少しの間、互いに無言で見つめ合う。


 母が何を思ったのか、パチンと手を合わせ、朗らかに言った。



「さあさあ、私たちはお邪魔にならないよう退散しますから、ゆっくりしてくださいね〜。ほら行きますよ、旦那様!」


「そうだな。アリシア、くれぐれも殿下に失礼のないようにな……今さらのような気もするが」



 どういう意味だ、と言い返す間もなく両親は客間を出て行ってしまった。


 残されたアリシアはどうしたら良いのかわからず、その場に立ち尽くす。



「アリシア、とりあえず座ったらどうだ?」



 イルヴィスはアリシアの名前を呼ぶと、優しく微笑んだ。その笑顔を見ると、妙な緊張と気まずさが一気に和らぐ。



「失礼します」



 先ほどまで母が座っていた席にゆっくり腰を下ろす。

 向かいでイルヴィスはアリシアの顔をじっと見つめると、少し眉をひそめた。



「数日会わないうちに少しやつれたか?」


「そんなことは……」



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