第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


「そもそも貴女が、人に害をなすための道具にハーブティーを使うはずがないだろう」


「あ……」



 最初からイルヴィスはアリシアを信じていたのだ。

 それがものすごく嬉しくて、アリシアの目には勝手に涙が浮かんできた。



「っ……わたし、ずっと殿下はわたしを疑ってるんじゃないかって不安だった……」


「アリシア……」


「せっかく仲良くなれたのに、嫌われてるかもしれないって」


「嫌うはずがない。何があっても」



 イルヴィスの声は真剣だった。それからおもむろに立ち上がり、アリシアの横に回り込んでしゃがんだ。

 そして、その白く細い指でアリシアの涙をそっと拭った。少しひんやりしていて気持ちいい。



「アリシア、手を」


「手?」



 彼は、涙を拭った方と逆の手を差し出しながら言う。アリシアは深く考えず、言われるがまま手を置いた。


 イルヴィスはその手の甲に、そっと口づけをした。



「私は何があっても貴女を嫌わない。永遠に貴女の味方だと誓う」



 何が起こったのか理解できず、アリシアはしばらく呆然とした。

 だが、口づけられた手の甲を見てハッとした。



(え……今)



 顔の温度が一気に上昇してきた。


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