第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 強く言い切ったニーナは、しかしすぐ自嘲気味に笑った。



「……なんて思ったんですけどね。アリシア様を未来の王妃の座から引きずり下ろすのに、このやり方はさすがに無理があったようです」


「ずっと、考えていたの。貴女の行動がわたしを陥れるためだったとして、動機は何だろうって」



 彼女がアリシアを個人的に恨んでいるとは考えづらいし、少し報酬を貰うくらいでは聡明な彼女は動かない。

 だとしたら、「少しくらいの」ではない報酬──金銭などではなく、もっと手っ取り早くニーナを動かすことのできる餌があったのだろう。



「わたしね、ニーナさんのいた孤児院の院長──いえ、元院長に話を聞きに行ったの」


「えっ、院長先生に……」


「貴女、少し前に彼の元を訪れて言ったそうね『院を取り戻せるかもしれない。期待して待っていて』と」


「っ……」



 イルヴィスと二人で街を歩いた日、帰りに見つけた孤児院の跡地。

 あの孤児院は、幼少期のニーナが過ごした場所だ。

 そのことはあの日、跡地に足を踏み入れたときに気がついていた。だが、その頃はまだニーナと実際に会う前だったこともあり、あまり深く考えておらず、出会った後は彼女本人に気を取られて忘れていた。


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