第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
貴女は、と聞かれたのでアリシアは「わたしも日本人で、女子高生だったわ」と答えた。入院していてあまり学校には行けていなかったが。
ニーナは質問しておきながらもあまり興味はないらしく、「へえ」と軽くうなずいただけだった。
「では、この世界がとある少女漫画の世界であることはご存知ですか?」
「ええ。一度読んだことがあるから」
「あたしは数え切れないくらい繰り返し読みました。だからわかるんです。貴女だけが……いや、貴女や貴女に関わった人だけが、あたしの予想と違う動きをする」
ニーナは心を落ち着けるように、何度か深呼吸をしてから続ける。
「あたしは、この世界は漫画のストーリーの通りであるべきだと思っています」
「どうして……そうあるべきだと?」
「それが、結局皆が幸せになれるんです。アリシア様は漫画を一度しかお読みでないということなので記憶にないかもしれませんが、孤児院の危機を“ニーナ”が救うエピソードがあったんです」
そうは言っても、たった二コマ分しかない、院長の思い出として語られるだけのエピソードですが。あたしも忘れていたぐらいですし。
ニーナは付け足して言うが、そこまで言われてもアリシアには思い出せない。