第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「良い感じね。場所も障害物が少ないから遠くにいても見えそう」
アリシアは鼻歌が聞こえそうなくらいに機嫌よくポットの中身をカップに注ぐ。
そしてそれをニーナに手渡した。
「ニーナさん、味見お願い」
「っ……はい」
ニーナは意を決したようにカップの中身を飲み干した。
その表情を見て、アリシアはニヤリと笑みを浮かべる。
「味は完璧ね。じゃあとりあえずもう一杯」
「……よろこんで」
ニーナの持つカップに二杯目のお茶を注いだとき、にわかに周りがザワリとした。
その理由はすぐにわかった。
「イルヴィス殿下だわ」
「今日も素敵……」
「あの冷ややかな瞳がまた良いのよね」
先ほどまで談笑していた令嬢たちが一斉に現れたイルヴィスに注目する。頬を染めつつ、各々がため息と共に呟き合う。
「ねえ、殿下が新しい妃候補を探しているという噂が本当なら、もっと積極的にアピールしにいくべきかしら」
「……緊張して私は少し無理かも」
アリシアは彼女たちの会話に何となく耳を傾けながら、少し離れた場所にいるイルヴィスを観察する。予想通りならそろそろだろう。