第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
そのまましばらく見ていると、彼の元へ近寄る一人の令嬢と、それに寄り添うように続く中年男の姿が目に映る。
今日も眩しいくらいにギラギラ華やかな出で立ちの彼女は、間違いなくサラ・ローラン令嬢だ。
サラはイルヴィスに向けて優雅に一礼すると言った。
「イルヴィス様。わたくし、信じておりましたわ。貴方があの婚約を考え直してくださると」
噂を信じきっているらしいサラは目を潤ませている。
彼女に寄り添う男も大きくうなずいた。
「殿下。僭越ながら、娘は容姿も教養も申し分なく、国母としての素質も十分にございます。サラを殿下の妃に強く推薦したい」
話の感じから察するに、彼がサラの父親であり、ローラン家の主なのだろう。
イルヴィスは目を細め、「ほう」と呟きサラに目を向ける。
「教養がある、か」
「あの、殿下は夜会のときのことをまだお怒りですか?ですがわたくしは、反省してきちんと改心いたしましたわ。それよりむしろ……」
サラは静かに目を瞑って開くと、不敵な笑みを浮かべ、アリシアのことを指し示した。
「自分の娯楽のために他人の命を軽く扱う人間の方が問題ですわよねえ、アリシアさん」