第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 どうやらアリシアがいることに気が付いていたようだ。これでわざとらしく存在をアピールする手間が省けた。



「何の話ですか?」


「あら惚けるの?王宮のメイドに毒を盛って瀕死にさせたという話、ここにいる方々も聞いたのではなくて?」



 サラが周りを見渡すと、何人かが「そういえば」と顔を見合わせる。

 サラはその様子に満足したらしく、得意げに続けた。



「機嫌が悪いとイルヴィス様の目が届かないところでそのメイドをずいぶん虐めたそうじゃない」


「そんなことしてません。いい加減なことを……」


「いい加減じゃないわ。だってそのメイド、偶然知り合ったわたくしに助けを求めてきたのよ。『アリシア様の嫌がらせに耐えられない。そのうち殺されるかも』って」



 サラは胸を痛めている、というように両手で胸の辺りを押さえた。振り返って「証人だってたくさんいるのよ。ねえ?」と誰かに呼びかける。

 そこには、五人のメイド服姿の女性たちがいた。そのうちの一人がおずおずと手を挙げる。



「あの、確かに見ました。アリシア様がニーナに掃除用の水をかけたり、階段から突き落としたりする場面を何度も……」



 彼女の証言に、他の四人も同意するようにうなずく。


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