第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「自分より下の身分だからと、他人をあんな風に扱う方に、殿下の妃になってもらいたくないです……!」
様子を見ていた参加者たちが、第三者の証言にザワつき出した。
アリシアは、人々の刺すような視線に強い侮蔑の感情が混ざっていることを肌で感じる。
サラは軽く口角を上げると、今度はニーナを見た。
「ちょうど被害者もいるわね。言ってやりなさい、あなたがこの女にどんなに酷いことをされたのか」
優しくそう語りかけられたニーナは、目に涙を浮かべうつむいていた。
可憐で、誰もが守ってあげたいと思うようなヒロインオーラが遺憾無く発揮されている。
そんな彼女が、ゆっくり顔を上げる。
その目からは大粒の涙がポロポロと零れ落ちて──
いなかった。
その代わりに、世の大勢の男性が一目で夢中になってしまいそうな魅力的な笑顔が浮かんでいた。
「あたしの同僚を、ずいぶんたくさん買収されたんですね、サラ様」
「……え?」
サラは次に言おうと準備していた言葉を飲み込み、パチクリと瞬きをした。
「あたしはアリシア様に嫌がらせをされたことなんてありません」